平成25年 昭道館本部寒稽古
少年部開催日:平成25(2013)年01月11日(金)-13日(日)
一般部開催日:平成25(2013)年01月14日(月)-20日(日)*最終日は合同稽古会
場所:昭道館本部道場(大阪市)
レポーター:酒井進之介指導員
少年の部
参加者平均24名/日
内容 今回の少年の部寒稽古のテーマは「掛かり稽古ができるようにすること」
各日の主な練習内容は以下の構成で行った。 - 基礎トレーニング
- 基本練習(受身・短刀突き)
- 短刀体捌き競技/短刀制御競技
- 短刀突きに対する技の練習

自分の体勢を安定させたまま、タイミングを図って相手の攻撃を捌き、制御するという合気道の基本重要ポイントがかなり上達したのではないかと思う。 また自分の身を守る受身についても、いつもと違う雰囲気の中、集中力が高まったのか、上達する参加者が多かったと思う。

一般の部一日目(1月14日(月))
参加者70名
天気曇り この日の最高気温:8℃ 最低気温:4℃
内容 - 基本手首技8本 (基本の取り方と実際の技)

富木謙治師範は合気道の技を大別すれば当身技と関節技であるとされた。乱取基本の形17本は、お互いが自由意思で行っては危険であろうと考えられる技、また自由意思で行うには複雑であろうという技を省き、且つ、柔よく剛を制す、小よく大を制す理合の浮技を入れてまとめられている。 しかしながら古流の形を稽古する際には、17本では原理的に足りない内容がある。それらも含めて合気道全体の基本の技としてまとめられたのが基本の技19本である。 19本に含まれていて17本に出てこないものには手首技が多い。手首技は19本の中で8本にまとめられている。その取り方を先ずは基本として正しく覚え、それを実際の技を行う時に活かせれば良いというのが富木師範の考え方であった。 また、多くの人にとって逆に基本は分かりにくい面がある。従って技で覚えてから基本を学び直すのも一つの方法である。

一般の部二日目(1月15日(火))
参加者69名
天気晴れ この日の最高気温:7℃ 最低気温:4℃
内容 - 基本当身技5本
- 相構え片手取りに対する当身技5本
- 逆構え片手取りに対する当身技5本

当身技の定義は、相手の急所に柔らかく当てて、肘の長さを変えずに、相手の両足を結んだ直角二等分線の方向へと移動力で掛けることである。 そして、その急所とは、人体を前面/背面からみて左右対称になるように引いた線上と、側面から見て頭上から垂直に下した線上に点在する。 天頭、兎烏、唇中、喉仏、頸椎、水月、釣鐘が前者、天頭、霞、独鈷、脾腹が後者に当たる。 それらの急所は衝撃的に当てれば生理学的な弱点となり、相手を昏倒させることも可能であるが、柔らかく当てて移動力を用いれば力学的な弱点となり、相手のバランスを崩すことが可能である。 正面当、相構当は唇中、喉仏、逆構当は兎烏、霞、下段当は水月、釣鐘、後当は頸椎、独鈷を攻めたものと考えることができる

一般の部三日目(1月16日(水))
参加者69名
内容 - 基本肘技6本 (押倒系3本・引倒系3本)
- 相構え片手取り(固めた時)に対する押倒(梃を使って)
- 相構え片手取り(引いた時)に対する押倒(裏に入って)
- 相構え片手取り(押した時)に対する押倒(体を開いて)
- 正面打ち押倒
- 横面打ち押倒
- 突き押倒
- 相構え片手取りに対する脇固(押倒系)
- 逆構え片手取りに対する脇固(押倒系)
- 相構え片手取りに対する脇固(引倒系)
- 逆構え片手取りに対する脇固(引倒系)

大東流柔術の武田惣角翁は技に名称を付けず、それを巻物の順番で呼んだ。それが第一ヶ条、第二ヶ条という呼び方である。植芝盛平翁も最初はこの呼び方を用いていたが、武田翁から独立して相生流を名乗る際に、当時隆盛を極めていた柔道五教の形に倣ったと考えられる現在の呼称、第一教、第二教を用いるようになった。  講道館柔道の嘉納治五郎師範は、古流の技の名称について、自然現象を用いた分かりづらいそれまでの呼称でなく、分かりやすい「背負投」等の呼称に改めた。現在、我々が用いている技の呼称である「正面当」や「押倒」も、この嘉納師範の考え方に倣い、富木謙治師範が植芝翁の下を離れる際に呼称を改めたものである。  尚、名称の違いはあれ、合気の技としては武田翁も植芝翁もそして富木師範も肘技の1本目は押倒であった。また、脇固については、我々が乱取を行うこともあり、富木師範のコントロールされた技が一本であるという考え方から、「逃がさない、傷めない」を理想とする掛け方になっている。本日の応用技はその押倒と脇固について行った。

一般の部四日目(1月17日(木))
参加者62名
内容 - 手首技8本(初日の復習)
- 当身技相構え片手取り5本・逆構え片手取り5本(2日目の復習)
- 肘技:押倒を相構え片手取り3本/正面・横面・突から各1本
- 脇固を相構え片手取り・逆構え片手取りから押倒系・引倒系の4本(3日目の復習)
- 相構え片手取り(固めた時)に対する引倒
- 相構え片手取り(引いた時)に対する押倒(裏に入って)
- 相構え片手取り(押した時)に対する押倒(体を開いて)
- 両袖取り腕捻腕返
- 後抱え取り腕捻

これまでの復習と3日目の肘技の残り部分を行った。実際の技は基本の組み合わせが多い。腕捻腕返も両袖取りで組み合わせて示された。

一般の部五日目(1月18日(金))
参加者76名
内容 - 護身の形座技・半座半立技5本
- 護身の形徒手立技8本
- 護身の形短刀捕8本

寒稽古の前半のテーマは合気道全体の基本の技19本であった。護身の形には乱取基本の形17本には含まれていない取り方が含まれている。
 徒手立技の1本目は相構え逆手の小手捻、2本目は逆構え逆手の小手捻である。基本の技を応用に活かすことによって正しい取り方をより身に付けることが出来る。

一般の部六日目(1月19日(土))
参加者70名
内容 - 本体のつくり 正面当110本
- 短刀17本(当身技・肘技・手首技・浮技で分けて行う)
- 掛かり稽古

「移動力に始まり移動力に終わる、移動力が全てである」とは、富木謙治師範が昭道館における指導の際に示された言葉である。相手の攻撃を捌くのも移動力、捌いてから打ち込む、または組みつくのも移動力、そしてそこから相手を崩し、掛けるまで全ての過程において移動力が必要とされる。植芝翁はとても動きが速かったと言われている。しかし誰もが植芝翁が通ったような修行過程を踏むわけにはいかない。従って、誰もがある程度努力すれば上達できるような稽古が必要である。本体のつくりがこれに当たる。

合同稽古(1月20日(日))
参加者57名
内容 - 基本手首技8本の取り方
- 当身技本体のつくり5本
- 相構当応用技(正面打・横面打・突き・相構え片手中段崩/下段崩・前両手・後両手)
- 基本肘技6本
- 押倒応用技(相構え片手固める/引く/押す・正面打・横面打・突き)
- 脇固応用技(押倒系相構え/逆構え・引倒系相構え/逆構え)
- 引倒応用技(逆構え片手固める/引く/押す)
- 後抱取り腕捻・両袖取り腕捻腕返

最終日は、今回の寒稽古の総まとめとして、基本技19本の基本と応用を行った。
富木謙治師範は、昭和33年に「合気道入門」の中で初めて合気道の基本の技として15本を示され、次いで昭和38年には「新合気道テキスト」において、乱取の基本として17本を示された。その後、昭和50年にはTBSブリタニカ社が制作したフィルム「合気道競技」において、全体の基本として19本を示されて今日に至っている。護身の形においても19本を稽古していないと、正しく基本としては身に付けていない内容が出てくる。乱取基本の形17本と並行して、合気道全体の基本技19本を覚えることにより、幅広く、基本として身に付けることが出来る。





inserted by FC2 system